スロバキア連載:スロバキア人のライフスタイルと食生活 ―朝は早起き、昼食がご馳走―

『チェコじゃないスロバキア』の著者である増根正悟(ましねしょうご) さんによる連載を開始します。増根さんはスロヴァキアで計7年間生活し、これまでに在スロバキア日本国大使館や、駐日スロヴァキア大使館などで勤務。『チェコじゃないスロヴァキア』(パブリブ、2024年)を出版し、日本国内でも有数のスロバキアを知る人物です。NOVESTAのお客様の中にもNOVESTAをきっかけにスロバキアについて関心を持つ方が増えてきたため、連載にて様々なトピックを紹介いたします。ぜひご覧ください。

スロバキア・ブラチスラヴァ旧市街の街並み

スロバキア人の朝が早い理由

 スロヴァキアの朝は早い。4時台にはトラムや市バスが走り始め、6時に始業する工場もある。オフィスの仕事も、フレックス制度を導入している会社では、朝7時頃には仕事を始める人も多いという。学生も「早起き」から逃れられない。ぼくが首都ブラチスラヴァにある国立コメンスキー大学に通っていた時、1番早い授業は7時半開始だった。

 なぜ、これほど朝が早いのか。友人に聞いてみると、「スロヴァキア人は先祖を34代ぐらい遡れば農民にたどり着く。農家の朝は早いので、スロヴァキア人には早起きのDNAが刻み込まれているのだ」とか、「ニワトリやガチョウのような家禽を庭で飼っている人は、餌を与えるために、毎日早起きしないといけない」と説明された。別の友人は、「社会主義時代、電力消費を抑えることを目的に、国民を早く寝かせるために、国家主導で始業時間を繰り上げた」と話していた。いずれも、嘘か本当か分からない釈然としない回答であったが、現実として、スロヴァキア人が早起きであることは間違いない。

 朝早く仕事が始まるということは、仕事が早く終わるということだ。仕事終わりにビールを1杯ひっかけてから帰るのは、スロヴァキアでも同じらしい。ただ、その時間が早すぎる。15時を過ぎる頃には、平日であっても、街中のカフェや飲み屋に人が集まり始める。夏になると、各都市の旧市街にテラス席が並び、そよ風を受けながらコーヒーやワインを片手に賑わう客でいっぱいになる(写真①、②)。子どもたちはどうだろうか。小中学校や高校も、朝8時には学校が始まり、13時~15時には授業が終わってしまうため、その後は習い事や部活動のようなアクティビティ(スポーツや楽器の演奏、語学など)に参加することが多いそうだ。

スロバキア・ブラチスラヴァ旧市街のカフェが並ぶ通り
写真①:ブラチスラヴァ旧市街のカフェ
スロバキア・ブラチスラヴァ旧市街のテラスカフェ
写真②:ブラチスラヴァ旧市街のカフェ

 

朝食と10時の軽食「desiata」

 朝が早いスロヴァキア人は、朝食の時間が慌ただしい。大抵の場合、パンにハムやサラミ、チーズをのせて、あるいはジャムやバターを塗って、すませてしまう(写真③)。朝食が早いとお腹が空いてしまうので、学校では、desiata(ジェシアタ:10の意味)という「10時の軽食」を食べる習慣がある。

スロバキアで親しまれるチーズとサラミ
写真③:チーズやサラミはワインのおつまみとしても人気

昼食が一日のご馳走

 平日のお昼にスロヴァキアにいることがあれば、是非地元のレストランを覗いてみよう。どの店でも、ランチメニューを提供しているはずだ。例えば、スロヴァキアの地方都市トルナヴァのレストランでは、10時から14時半までランチメニューが用意されており、「スープ+主食+付け合わせ」のセットが8.9ユーロ(約1650円)で提供されていた(写真④)。円安のせいもあり、外食費が高く感じる。しかし、ボリュームは日本よりも遥かに大きいので、小食の人は食べきれないかもしれない。そんな時は、容器代さえ払えば、お持ち帰りすることが可能だ。

スロバキアのレストランに掲示されたランチメニュー
写真④:ランチセットの一例。3種類の主食とスープから選ぶことができる

 夕食は、昼食と比べると控えめである。スープ(一度作れば数日間貯蔵できる)を用意して、パスタを茹でて食べる程度のこともあれば、暖かい食事は作らずに、サンドイッチやバゲットですませることもある。夕食は最低限ですませて、飲みに行ってしまう人が多いようだ。

日曜日に家族で囲む伝統的な昼食

 伝統的なスロヴァキアの家庭で最も重視されている食事は、日曜日の昼食だ。カトリック信者が国民の半数を占めるスロヴァキアでは、日曜日の午前中に教会のミサに出席した後に、家族そろって昼食を食べるのが、古き良き家庭像となっている。定番のメニューは、鶏コンソメのスープ(細かく切ったパスタも入っている)、ポテトサラダ、豚肉のシュニッツェル(カツレツのような料理)である(写真⑤、⑥)。

スロバキアの日曜日の昼食で食べる鶏コンソメスープ
写真⑤:鶏コンソメのスープ
スロバキアの伝統料理・豚肉のシュニッツェル
写真⑥:豚肉シュニッツェル

スロバキアの国民食「ブリンゾヴェー・ハルシュキ」

 朝食と夕食は質素なスロヴァキアであるが、その食文化は周辺諸国の影響も受けており、多様で豊かである。中でも、国民食としての位置づけにあるのが、ブリンゾヴェー・ハルシュキ(bryndzové halušky)だ(写真⑦)。これは、小麦粉とジャガイモで作ったニョッキに、羊のフレッシュチーズ「ブリンザ」をかけたもので、トップにカリカリに焼いたベーコンをまぶしている。ブリンゾヴェー・ハルシュキが最もおいしい季節は5月だ。その理由は、春になり新緑を食む羊から取れるチーズが、1年で一番新鮮だからである。

スロバキアの国民食ブリンゾヴェー・ハルシュキ
写真⑦:ブリンゾヴェー・ハルシュキ

 

増根正悟(ましねしょうご) 

1990年生まれ。スロヴァキアで計7年間生活し、これまでに在スロバキア日本国大使館や、駐日スロヴァキア大使館などで勤務。主な著書に『チェコじゃないスロヴァキア』パブリブ、2024年。

著書『チェコじゃないスロバキア』

本記事の執筆者・増根正悟さんの著書です。スロバキアの歴史や文化、暮らしをより深く知りたい方は、ぜひあわせてご覧ください。

増根正悟著『チェコじゃないスロバキア』表紙
増根正悟著『チェコじゃないスロバキア』(パブリブ、2024年)

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